メーカーが変わる
〜Made in JapanからMade by Japanへ(2)


2.商品企画の時代

 UPQの異例さは企画から商品販売までにたったの2か月しか要していないことだ。「そんな短期間でモノづくりができるはずがない」と製造業に従事している方々からの指摘が飛んできそうだが、その指摘は当たってもおり、外れてもおりというところだ。

 まず当たっている方から。
仮に3Dプリンターを使っても単発製品ならいざ知らず、量産品を短期間で作ることは不可能だろう。それを企画から製造・販売までわずか2か月でやったというのだから、どんな魔法を使ったのかと訝る方が正常だ。
 実際、発売前後にいくつかの「ミス」を起こしており、その中の一つに「技適マークの認証ミス」がある。

 「技適マーク」、正式名称は「技術基準適合証明」「技術基準適合認定」のいずれか、あるいは両方の認証を受けている無線機に対して付けられるマークのことで、認証は総務省が行う。
 もし、技適認証が取れてない無線機(スマホもこの中に入る)を国内で製造、販売、使用すると電波法違反の罪に問われる。
 スマホを開発・販売しようという会社がこのことを知らないのも妙な話だが、当初、同社は「該当の製品に関する技術基準適合認定は取得」していたが、技適マークの「表記ミス」としていた。ところが、その後、総務省から「認証が未発行」と指摘され、再度訂正。
 そもそも技適マークの「表記ミス」は商品を購入したユーザーから指摘されたもので、なんともお粗末。
 ミス(?)はこれだけではない。スマホのスペックについても当初クロック数を1.5Gとしていたが、その後1.3Gに変更している。

 なぜ、このような「初歩的」ともいえるミスを犯したのか。まず同社の言い分を聞いてみよう。
「製造工場ならびに認証取得代理会社に事実関係を確認いたしましたところ、正式な認証を前にして製造工場が出荷していたことが判明いたしました。本来であれば弊社が認証を確認・精査すべき立場であり、この確認を怠りましたことが要因です」

 早い話が素人のモノづくりで、UPQという会社は企画だけ。実際に製品づくり(製品企画)をしたのは「Cerevo(セレボ)」(2007年設立)という会社であり、製品自体は中国メーカーが作ったものだ。
 こうしたやり方は珍しいものではなく、外部への依存度の差はあるが、多かれ少なかれ他社でも行われている。ただし、同社の場合は外部へほとんど丸投げで、自社では基本的なことさえやってなかったということだ。

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 しかし、しかし、である。いまやこのような方法でモノづくりができるということであり、そのことを認識すべきだし、それを実際に見せた同社から学ぶものは多い。
 もはやモノづくりは必要ない−−、とまではいわないが、今後このような会社が増えてくるのは間違いないだろう。
 企画力さえあれば商品はいとも簡単に作ることができ、販売もできる時代になったのである。なんといってもUPQはこの方法で17種24製品を一気に作り、世に送り出すのだから。
 「製造業とは」「モノづくりとは」などと言っている間に、素人が中国その他に出かけ、現地でモノを作っている工場を見つけ、そこの商品に多少のイロ付けをして日本国内で発売、などといったことが手軽にできる時代になっている。
 技術力よりは企画・販売力、プロデュース力の方が必要な時代、ということを実際に見せてくれた例で、他山の石とすべきだろう。

 さて、外れた方だが、すでに書いたように、たった2か月という短期間で商品化ができる(「モノづくり」という意味からは少し外れるかもしれないが)ということを若い女性起業家がいとも簡単に実現してしまった以上、「そんな短期間でモノづくりができるはずがない」という指摘は当たってないと認めざるを得ないだろう。
 ただ、何度も言うようだが、それは本来のモノづくりとは違うし、急ぐが故に「ミス(?)」も出ている。本来なら致命症になりうる「ミス」だろうが、日本社会は寛容(?)になったのか、それとも「若い女性」が起業したベンチャーにやさしいからなのか、ほとんどバッシングも起きなかった。この点も大いに学べる。

Made in JapanからMade by Japan

 プラスワン・マーケティング(「FREETEL」のブランド名で知られているので、以下「FREETEL(フリーテル)」と記す)はUPQに比べればましな企業である。代表者の増田薫氏は長年IT(ソフト、ハード両面)にかかわっているし、スマホに対する思い入れや会社づくりの思想がUPQとはまるで違う。年齢も増田氏の方が上だが、「モノづくり」に対する姿勢も増田氏の方が真摯だろう。
 長年取材を通じて様々な企業経営者と接してきた私の個人的な感想からいえば、企業理念やモノづくりに対する姿勢がしっかりしている所とそうでない所では、後者の方が失敗する確率が高い。特にベンチャー企業では。
 最後の踏ん張りが効くかどうかは、会社や商品に対する思い入れが強いかどうかというようなところが大いに関係してくるからだ。

 同社の製品の一つであるスマホは中国メーカーによるOEM製品で、この点はUPQも同じだが、いまやスマホは韓国製か中国製(台湾を含む)という状況なので、安く作るには中国製を調達するしかない。
                                               (3)に続く

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